不利益処分(指定取消)が著しく軽い処分となったケース
2020年06月15日
私が聴聞手続の代理人をしたケースですが,予定される不利益処分(指定取消)が聴聞手続を経て,著しく軽い処分となりましたので報告します。
熊本市は,法人の運営する高齢者施設(地域密着型認知症対応共同生活介護)で,施設職員が,利用者に暴行を加え死亡させた事件について,当該介護施設の指定を取消す処分を予告し,聴聞手続を行いました。
その上で指定取消処分の予定が,実際の処分は,指定の一部効力停止にとどまりました(2020年5月22日)。
事件について説明します。 2018年8月某日の深夜,認知症グループホームにおいて,夜勤帯の職員(甲)が,利用者(80代女性。認知症高齢者)の腹部を殴るなどの暴行を加え死亡させる事件が起きました。 当初,甲は利用者の体調に深夜急変があったとして,救急搬送されました。同日,当該利用者が死亡したところ,腹部に暴行の跡があったため暴行によるものとわかりました。 警察が内偵したところ,夜勤当職者であった甲が浮上し,防犯カメラの映像などが証拠となりまして,甲による犯行であることがわかりました。 甲は,傷害致死被告事件として起訴され,2018年中に,熊本地方裁判所で,懲役7年6月の実刑判決が言い渡されています。 行政庁(熊本市長)は,当該施設について,重い不利益処分をおこなうことを予告し,2019年3月,行政手続法による聴聞手続を開始しました。 聴聞手続において,施設側は,甲の刑事裁判に関する記録を取り寄せし,事案を分析するなどした上,可能な限り弁明を行いました。 甲の犯行は夜勤に単独で行われたものであること,甲はおとなしい性格でそれまで暴力傾向は認められないこと,犯行の動機は当該利用者が深夜しばしばコールボタンを連呼するなどしたことから,ホールで見守り介助を行っていたところ当該利用者が衣服を脱ぎ出す行為をはじめるなどしたことから,おもわずカットなり,その腹部を殴ったことなどを主張し,事業者側では,予見できなかった事情を明らかにしました。 行政手続法による聴聞期日は,当職立ち会いの下,合計4期日開催され,2019年8月に終結しました。同年9月,聴聞主宰者の報告書が作成されています。 報告書では,運営会社がこのような傷害致死事案を予見するのは困難であること,全国に同種の事案があるが指定取消処分を発令した事例はないこと,行政調査にも不十分な点があることなどが指摘されていました。 聴聞終結から処分決定まで約9ヶ月かかりました。 2020年5月22日になり,熊本市長から,不利益処分の内容を変更し,指定の効力の一部停止処分が発令されたものです。 効力の一部停止は,指定取消処分よりも軽いのですが,内容は,6ヶ月間の新規利用者の受入れ停止と,介護報酬の30%カットです。 その結果,当該介護施設は現在,利用者8名がいますが,利用者への利用サービスを継続することとなります。 今後6ヶ月間は新規の利用の受入ができませんし,介護報酬も一部カットされますが、6ヶ月を経過すれば,以前の通り新規の利用得経理も可能ですし,介護報酬も100%受領することができるのです。 事業者は、深く反省され再発しないよう対策を施されましたが、指定取消処分を回避されて安心されました。
最近の投稿
- 2025/12/2 指導監査救済センター新聞12月号 2026年に向けて
- 2025/10/2 指導監査救済センター新聞10月号 佐賀県行政書士会で研修講師しました
- 2025/09/13 指導監査救済センター新聞9月号