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お知らせ

介護裁判新聞6月号 虐待と監査と行政処分と
2020年06月15日

施設内虐待

先日、岡山県勝央(ショウオウ)町で高齢者虐待が起きたという記事がでました。社会福祉法人が経営する特別養護老人ホームで20人を超える職員が、複数の入所者に対する虐待を繰り返し4人が解雇されていたとのことです。

 

町は施設から聞き取りをして虐待があったと断定。岡山県が近く調査に入るようです。施設を運営する社会福祉法人によると、介護担当職員の過半数に当たる22人が、入所者11人(/70人)に対し、決められた分量の食事を与えなかったり、「はよう食え」といった暴言をはいたりしていたとのことです。このほかにも、バリケードをつくって部屋から出られなくしたり、ズボンのひもを強く縛って脱げないようにしたりしていたようです。

そしてついに3月頃、勝央町に「職員が腹をひもで強く縛る行為をしている」と匿名の通報がよせられ、虐待が発覚したようです。県の監査はこれからのようです。

 

特別養護老人ホームは、老人福祉法の施設ですが,地域密着型介護福祉施設として、介護保険の適用を受けることができます。施設内虐待については,高齢者虐待防止法の問題となりますが、介護保険法にも「人格尊重義務」が規定されていますし(同法78条の第8項)、高齢者虐待防止法違反は、介護保険法の指定取消原因のひとつです(同法78条の10第12号,同法施行令35条の5第25号)。

 

施設内虐待が疑われる場合、どのような調査がおこなわれるでしょうか。

第一に、高齢者虐待防止法を根拠とする任意の立入調査です。緊急の場合、ただちに立ち入ることが可能です。条の10第12号,同法施行令35条の5第25号)。

第二に、介護保険法の適用施設の場合、介護保険法の基づく監査をおこないます。地域密着型の施設の場合、介護保険法78条の7第1項の規定により、市長村長は、報告を命じたり、帳簿書類等の提出を命じたり、従業者に出頭を求めて質問に答えたりするように命じることができます。施設内に立ち入り、物件の検査をすることもできます。このような命令を拒否したり、虚偽の報告・回答をしたりしたときは、罰則の適用もありえますし、指定を取り消すこともできます。

 

ただこの事案は、真相が解明されていません。身体拘束が指摘されていますが、身体拘束も常に虐待となるものではなく、本人のためになるなど合理的な理由があり、本人又は家族の同意を得ているときは身体拘束できるのです。ただし、同意のない身体拘束等は虐待となります。過去の例として、罰して食事を与えなかったり、体調不良など医療機関を診療させるべき時期に診療させていなかったりするケースなどでは、重い行政処分を課された施設もあります。一方、高齢者グループホームで施設職員が暴行により利用者を死亡させたケースで、指定の効力の一部停止(新規利用者受入停止)6ヶ月という軽い処分で済んだケースもあります。

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