高齢者施設の行政対応相談のほかに,障害者福祉サービスや児童福祉サービス事業の方も行政相談にこられる。
これら3つの福祉サービス事業は,法的な規制が共通するからだ。いずれも厚生労働省が所管するが,むかしは行政が一方的にコントロールしていた制度だったが,いまは,利用者である高齢者,障害者,児童が,受けたいサービスを選び,効果的に活用する制度になった。
サービス財源が,高齢者だけ保険化されたが,なんだったら3つの事業を包括して福祉サービス保険とすることもできる。
サービスを提供する事業者は,営利企業でもよいが,行政庁から審査のうえ指定を受ける必要がある。指定サービス事業所として一定の水準を保つ必要があるため,厚生労働省令などで定めた最低限度の条件を満たす必要がある。
定期又は不定期に,指導監督を受けるのもそのためだ。法令違反が摘発されると,行政処分を受けるおそれがあるのも共通する。
関係する法令等は,介護保険六法,障害福祉六法,児童福祉六法に集約されているが,基準に関する法規をみると,ほぼ共通することがわかる。
ちがうのは,行政の組織内部で,担当する部署が異なることだ。一般的には,高齢者は介護保険課,障害者は障害福祉課である。18歳未満の(児童に分類される)障害者と,18歳以上の障害者に区別したことから,障害福祉課が,年齢に関係なく両者に関する行政権限を負担している。
歴史的には,法改正の早い,遅いという関係から,介護保険課の実務経験年数が,障害福祉課のそれを超える。
事業者側からみた感覚としては,高齢者介護行政は厳格な対応をとることが多く,障害福祉課の対応はそれに比べると,緩やかなようにみえることがある。
ほとんどの事業者は行政との争いを好まない。
行政法関連の事件は件数が少ないから,前例となる裁判例が存在しないことが多い。そのため行政訴訟を提起すると初めての論点となることが多く,法令の解釈について,当事者と裁判官とで意見が食い違うことも多い。
高齢者施設,障害者・児童福祉施設について,これから,数多くの裁判が提起されるだろう。そして,裁判例が集積していくことにより,重要な法令解釈が生成されると思う。
いま,長崎地裁で争点が介護報酬の算定要件に関する事案がある。前橋地裁では,法人が指定取消処分を受けた場合に,不利益を受ける法人役員の手続保障が問題となっている。
このような裁判例の積み重ねが大切だと思う。
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